会長挨拶

第34回日本トレーニング科学会大会開催にあたって

日本トレーニング科学会 会長

神﨑 素樹(京都大学)

 『現場にとって「役に立つ」研究とは?~ポスト2020のトレーニング科学研究を考える』をテーマに第34回日本トレーニング科学会大会が開催されることを心よりお喜び申し上げます。同時に、学会大会を快くお引き受け頂き、学会大会の準備にご尽力頂きました苅山靖会頭(山梨学院大学)ならびに関係者の皆様に感謝申し上げます。

 昨年と同様、新型コロナウイルス感染症拡大の情勢を鑑みオンライン開催になりました。苅山靖会頭は一年前からオンライン開催を想定した学会大会を企画しており、オンラインならではの素晴らしい学会大会になるものと確信しております。

 東京オリンピック・パラリンピックはまだ終わっていません。東京オリンピック・パラリンピックの結果を詳細に分析・定量して、それを基に修正する。一度では十分に修正できないためこれを何度も何度も繰り返します。この過程をフィードバックと呼びますが、フィードバックが安定してはじめて東京オリンピック・パラリンピックが幕を閉じる、と私は思っています。フィードバックにおいては、最初の修正が一番大きく、これに間違った操作が加わると軌道修正が極めて困難になります。本学会大会は、東京オリンピック・パラリンピック2020大会直後の開催ですので、最初の修正という位置づけとなります。参加者全員により適切な修正が必要となる極めて重要な学会大会となります。本学会大会のテーマやプログラムを眺めて頂くと、まさに東京オリンピック・パラリンピックのフィードバックの要素がぎっしりつまった特別講演、シンポジウム、実践事例、特別講演が企画されていることがわかります。

 日本トレーニング科学会大会において、毎年多くのすばらしい研究が一般発表されています。日本トレーニング科学会は、トレーニング実験および縦断的研究を重視し評価したいと考え、一昨年度より「トレーニング科学」に掲載された論文の中から研究が長期にわたるトレーニング実験や縦断的研究に対して、「トレーニング実験研究賞」および「縦断的研究賞」を授与することになりました。本学会の研究発表から「トレーニング実験研究賞」および「縦断的研究賞」が選出されることを期待しています。参加者の皆様からの「トレーニング科学」への投稿をお待ちしております。

 末筆となりましたが、実行委員の先生方はもとより、多大なご支援・ご賛助を賜りました多くの関係者、団体、協賛企業の皆様に深く御礼申し上げます。そして、参加者の皆様が学会を盛り上げ、思い出に残るような充実した学会大会になることを祈念し、会長の挨拶とさせて頂きます。


会頭挨拶

第34回日本トレーニング科学会大会開催にあたって
主管校より

第34回日本トレーニング科学会大会 会頭
苅山 靖(山梨学院大学)

 この度、第34回日本トレーニング科学会大会を、山梨学院大学を主管校として開催させていただくことになりました。新型コロナウイルス感染拡大のため、見通しの立たない社会情勢が続いています。本大会の企画当初は対面での実施可能性を模索していたのですが、情勢回復の目処は立たず、オンライン形式での開催となりました。本来であれば、本学にお越しいただき皆様とお会いしたかったのですが、残念でなりません。

 本大会のテーマは”現場にとって「役に立つ」研究とは?~ポスト2020のトレーニング科学研究を考える~”といたしました。トレーニング科学の分野では、長年にわたり「研究と現場の乖離をどう解決するか?」、「現場に活きる科学的知見とは何か?」など、研究と実践現場の共存・連携に関する課題が検討されてきました。これについて私は、唯一無二・普遍的な解を探すのではなく、アスリートやコーチ、運動やスポーツ競技種目の特性、さらには絶え間なく変化(進化)する社会情勢や科学・技術、スポーツパフォーマンスなどに応じて、目の前の実践現場を豊かにするための”その都度的な解”を考え続けることが大切であり、その考え方やその解を実行するための知識や知恵を学び続ける必要があると思っています。

 日本では大学におけるスポーツ科学系学部・学科や研究機関の設置など、運動やスポーツを“学”の対象とし、科学の視点から捉える風潮が強まっていることを感じます。そしてこれらは、東京2020オリンピック・パラリンピックを含む多くの実践現場を支えているとも感じます。そのような中、近年では上記の教育課程を経て、研究者でありながら実践現場で活躍しているサポートスタッフ、コーチ、さらにはアスリートが増えてきました。研究者と実践者の両方で活躍されている方々はいったい何を考え、何を大切にしているのか、気になって仕方がありません。本大会では、この方々の実践事例を収集することで、現場にとって「役に立つ」トレーニング科学研究の在り方について考えていきたいと思っています。

 日本トレーニング科学会では「あらゆるスポーツや運動の実施現場で、トレーニングに関する情報の集積と、これについての指導者や研究者など専門家の意見交換の場を共有することを目指した活動」が行われています。本大会が、このような学会活動、そして皆様の運動・スポーツ実践や研究活動に対して、少しでもお役に立つことができれば幸いです。年末に向けてお忙しい時期かと存じますが、本大会への皆様のご参加を心よりお待ちしております。